--そもそも「入場行進」、あれほど個々のリズムを狂わせるものはないね。一定のリズムに何百人の歩調をあわせようとする。もともと歩き方なんて千差万別。あわせるほうが異常と思わないかい?--
音ゲーの台頭
僕はその昔、おもしろいゲームの要素のひとつとして、「足音がゲームの効果音を超えていること」を挙げたことがある。たとえば『ボンバーマン』ではあいつが歩く足音がビートを刻んだ。初代『バイオハザード』では、床がじゅうたんかどうかで足音が違い、よけいに恐怖感をあおった。(さきほど発掘したので、掲載しておく。詳細な日付が不明だが、どうやら1997年10月頃に書いたようである……)
やがて、音楽そのものを楽しむ、ただしDTMでもない、そんなゲームが台頭しはじめる*1。ビートマニアに、DDR。DDR 2ndのころは、まだ分煙とかともほど遠い、やにくさいゲームセンターに100円をじゃらじゃらにぎりしめ、ひたすら踊ってたことも、あったっけ。*2
おそらくこの頃は、従順にビートを刻むということ自体がハイスコアを狙うことと同意であり、まれに、ノリをスパイスしたほうがやりやすいもの--『パラッパ ラッパー』など--があった程度だったと思う。前者は続編が出るたびにより高速化、変速化され、後者は「どんなキャラクターでやるか」「どんなデバイスでやるか」といった方向に新たなユーザーを求めていった。
初音ミクだから音ゲー?
初音ミク(や、ボーカロイドたち)は、「電子の歌姫」たちだから。だからなのか、リズムゲームとして目の前に現れた。そのなかのひとつ、ニンテンドー3DSの『初音ミク and Future Stars Project mirai』で、初音ミクゲームへのデビューとなったのである。*3
初音ミク and Future Stars Project mirai (通常版)
- 出版社/メーカー: セガ
- 発売日: 2012/03/08
- メディア: Video Game
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何より、ねんどろいどのキャラクター造形を使っているため、かわいい。ほんとうにかわいい。ゲームをしなくとも、とりかごでインコを飼っているかのような錯覚さえしてしまうほどだ。
そしてリズムゲームの部分にも、かなりの期待をして挑んだが、序盤の曲ですら、いわゆるノーミス、高得点が取れない。クリアはできるのだが、ゲームシステムが期待しているマーカー通りにビートを打つことができないのだ。
なぜだか考えた。まがりなりにも二十数年、電子オルガン(エレクトーン)をやってきたし、音楽の成績は前から数えたほうが早かったし、後付けながら絶対音感もあると信じている。それでも(成績の方の)スコアが伸びないのはどうしてか。--どうも、音楽のビートを打つよりも、このゲームは「初音ミクたちの”うた”にあわせる」ことに比重が重く置かれているようだと気づいた。その瞬間、Project Miraiは、音ゲーじゃなくなった。音ゲーにみせかけた、「初音ミクゲーム」だったのだ。
初音ミクゲームの未来
その後、なんとか1周目をクリアしたけれど、ハイスコアを狙うための「初音ミクの歌い回し」を習得できないため、ゲームプレイはそこで止めてしまった。おそらく、『パラッパ ラッパー』の時みたいに、原曲を何度も聴いてからチャレンジすればたぶんいけるとおもうのだけど。もしかしたらProject DIVA系列もプレイすれば、また違った感想になるのかもしれない。
初音ミクがこの世に生まれたのは2007年のこと。たった5年で、たくさんの人の人生を変えてしまった。そのくらいのインパクトがあるんだから、音ゲーだけにつなげるのは、とてももったいない、そういう気がするのだ。
もちろん音ゲーに近い要素があるほうが、作りやすく、売りやすいのかもしれないけれども、それ以外のジャンルのゲームがあってもいいのではないか。たとえば、ほんとうの初音ミクたちで作曲するのはまだ敷居が高いな、というひと向けの簡易コンポーザーだとか。あるいは、「悪ノ娘」などの作品から広がった世界観でのアドベンチャーやRPGなんかも、ありかもしれない。
「悪ノ娘」の小説版を読んでいるこどもを見かけたときの衝撃ったらもう。いや、そういう時代なんだね。